「進歩的な農家」—未知のニーズと、新たな展開の可能性—
By Saskia Krone
マーケターが農業ビジネス業界でマーケティング施策を検討するとき、しばしば登場するフレーズがあります。
「ターゲットとしたい層は?誰とコミュニケーションを取りたい?」
この問いに「進歩的な農家」という答えが多くの場合返ってくるでしょう。
「進歩的な農家」とは、投資に積極的で農業関連メディアと活発に関わる生産者を指します。机上では、こうした農家は殺菌剤から家畜用の腐蹄症ワクチンまで、あらゆる製品の理想的なターゲットと見なされます。しかし、マーケティング担当者がさらに深く掘り下げ、「進歩的な農家」について詳細を知ろうとし、施策に活かせる新たなインサイトを得たくても難しい場合があります。
彼らの性格的な特徴や動機に関するさらなるインサイトがなければ、ターゲットとなる農家に効果的にリーチし、エンゲージメントを高め、育成し、行動を促すことは困難です。農業ビジネス雑誌の広告が似通ったものになる理由は、そこにもありそうです。実際「進歩的な農家」に向けた施策には、データによる十分な裏付けがされているのでしょうか?様々なタイプの農家を顧客とするためのインサイトをチームは持っているのでしょうか?そもそも「進歩的」とは何を意味するのでしょうか?
進歩的な農家は存在するのか?
おそらく、全ての農家は「進歩的」です。いずれの農家も収益性の向上、労働負担の軽減、生産量と品質の向上を目指しています。イギリスで3世代続く80歳の混合農業の農家から、オーストラリアで数万haをスマート農業で管理する25歳の新規参入者まで、農家には天候や価格、時間の制約といった困難に直面しながらも、成功を目指すという共通の意欲があります。
マーケティングチームは農家に実務への助言をして注目を集めるべきではありません。その段階の教育は後ですることができます。それよりも、農家の潜在的な動機や個性に訴えかけることで関心を素早く引き付け、意思決定を促すことが重要です。
農家の個性と人間性
性格分析は長い歴史を持ちます。紀元前400年のヒポクラテスから1921年のユング、さらには現代のTEDトークに至るまで、私たちは性格のタイプを驚くほど似た方法で定義してきました。この方法は数千年の間、ほとんど変わっていません。人間はそれほどに理解しやすい存在なのです。私たちには皆、特徴、好み、そしてニーズがあり、誰もが4つのスタイルのうち一つを軸に行動しています。
青
(慎重・規律型)
内向的かつ思考型:タスクに集中し、プレッシャー下でも冷静で、思慮深く客観的である
赤
(支配的・直感型)
外向的かつ思考型:活動量が多く、他者と協力し、論理的に考え、事実にフォーカスする
緑
(サポート・安定型)
内向的かつ感情型:深堀り、内省、調和、そして合意を優先するアプローチを取る傾向がある
黄
(影響・インスピレーション型)
外向性的かつ感情型:社交性や他者への配慮に、行動志向と楽しさを組み合わせる

農家はいちばん自分に合った方法でコミュニケーションをしたい
「人は自分と似た人を好む」という言葉があるように、関心を引き、ターゲット層とつながるためには、農家の嗜好や関心のポイントをセグメントごとに理解することが重要です。
Kynetecが採用する農家のセグメンテーションモデルは、「農家はそれぞれ、自分に合った方法で情報を受け取りたい」という深い理解に基づいています。農家の好みに合わせることで、マーケティングチームは彼らの意思決定を潜在意識のレベルで促すことができます。その結果、何が得られるのでしょうか?それは、販売およびマーケティング活動の投資対効果(ROI)の向上です。ターゲットを正確に絞ることで、コストを抑えつつ、予測可能な方法で売上を伸ばすことができるようになります。
例えば、あなたのマーケティングチームが南アフリカで小麦種子のプロモーションキャンペーンを実施することになった場合、そしてKynetecのSegmentaのおかげでその市場の大半の農家が「赤(支配的・直感型)」に分類されることを知っていた場合、キャンペーンの見出しは、「青(慎重・規律型)」な農家をターゲットにする場合とは大きく異なるものになるでしょう。
「赤」の農家に響く見出しの例:
「小麦種子で最前線をリードせよ」
「青」の農家に響く見出しの例:
「小麦種子で最適な成長を計画しよう」
データ利用をさらに一歩進めると、色セグメンテーションを利用して顧客離れによる市場シェアを奪うことも可能です。ブランドは競合の市場機会を特定することができます。特定の市場や作物においてどの色のセグメントが自社ブランドへ乗り換えやすいでしょうか?
たとえば、ドイツでトウモロコシの種子を販売するあなたの営業チームが、「黄(影響・インスピレーション型)」のセグメントの農家を訪問しないとしたら、大きなチャンスを逃していることになります。このセグメントの農家は社交的で会話を好むため、営業担当者と対話することでブランドへの関心を高めやすい傾向があります。また、「黄」は新しいことに挑戦する意欲が高いため、ブランド変更へのハードルが比較的低いのです。
一方で、同じ市場において「赤」の農家を直接訪問する必要性はそれほど高くありません。なぜなら、ブランドがこのセグメントにアピールするような的確なマーケティングメッセージを発信することで、高い確率で「赤」の顧客を引きつけることができるからです。
マーケティング成功の鍵はパーソナリティの理解
農業関連企業は、KynetecのSegmentaを活用することで、自社のブランド価値を逆算的に検証することができます。顧客の多くを占めるセグメントはどの色なのかを調べることで、現在のメッセージやビジュアルスタイルがターゲットと合致しているかを見極めることが可能です。
特に成長戦略の観点では、この分析は極めて有益です。たとえば、作物保護分野では、有効成分の開発には高額なコストと時間がかかるため、新製品の成功を確実にすることが重要です。現在の顧客が「エキサイティング!新登場!収量アップ!」というメッセージ(「赤」「黄」向け)に魅力を感じるのか、それとも「包括的な試験結果」重視のアプローチ(「青」「緑」向け)が適しているのかを理解することが、新製品の成功を左右するのです。
また、市場や作物ごとのSegmentaデータには、あるブランドが市場浸透率を大幅に向上させたり、場合によっては倍増させたりする可能性が示されています。これは、現状で最も少ない色のセグメントの顧客を的確にターゲットとする成長戦略を実行することで実現できます。
メディア選定も色セグメントで最適化
やポスターなどを子供のために持参されると好感を持ちます。一方、内向的な「青」の農家は、すべての試験データが詳細に記載されたパンフレットを郵送で受け取ることを望みます。これは、「黄」と「青」の顧客が接触の距離感に関してどれだけ離れているかを示しています。
「緑」の農家は、近隣の農家が雨の多い秋の影響で春の種子を確保できなかったという記事を読んだ後にリスク軽減の決断をしますが、その前に必ず家族と相談します。「赤」の農家はあなたのブランドが実施するトライアルに積極的に参加し、今後5年間で最大の課題となりそうなことを教えてくれるでしょう。なぜなら、彼らは計画性を持って行動するからです。
メディア戦略には費用がかかります。国際展示会への参加、紙面やオンラインでの広告、パンフレットや販促資料の印刷、CRMシステムの運用など、多くのコストが発生します。それでも、これらはすべて「進歩的な農家」にとって有効なタッチポイントです。どの色のセグメントをターゲットにするかは、ブランドがすでに顧客として抱えている層に基づいて決まります。ブランドがターゲットとする色を把握したら、マーケティング部門は「フランスの「緑」、ナタネ/キャノーラ」をターゲットにするという指示を与えられ、順調に、そしてよりROI効果の高いスタートを切ることができます。
もちろん、すべての色セグメントに特定の製品やサービスを周知させる必要のあるキャンペーンもあります。例えば、持続可能性に関するコンテンツなどがそうです。そのような場合は、獲得したい市場における色セグメントの内訳を把握した上でアプローチします。
どの色セグメントが「進歩的な農家」?
色セグメントの特性を理解すると、多くのマーケティングチームは「赤」の農家こそが最も重要であり、技術をいち早く採用する「進歩的な」農家であると考えがちです。しかし、実際には利益を上げているすべての農家が進歩的であると言えます。
マーケティングの観点から見ると、Kynetecは「進歩的」という言葉はあまりにも曖昧で、製品の適切なポジショニングに役立つ具体的なインサイトを提供するものではないと考えます。私たちはSegmentaを活用して農家を色セグメントごとにターゲティングし、より深く農家のニーズを理解することを推奨します。
Segmentaデータによると、米国、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、ベルギー、オランダ、ポルトガル、スペイン、チェコ共和国では、色セグメントの分布が比較的均等であることが分かっています。しかし、南アフリカ、イタリア、セルビアでは、特定の色に偏りが見られます。
ブランドは、自社の現在の顧客構成をSegmenta分析で評価し、明確なターゲット設定と具体的な戦略策定に活用することができます。